ぷちトラvol.16有田陶器市特集 2013年4月発行

※この特集は、2012年の有田陶器市の取材をもとに構成しました。


眺めて 味わって 体感して

有田陶器市、

もうひとつのお愉しみ

世界最大規模のやきもの市といわれる、佐賀有田の陶器市。ただひたすら掘り出し物を求めて歩き回る熱心な買い物客に加え、最近は行楽気分でゆったりと散策する家族連れやカップルも随分と増えてきました。そんな心の余裕で改めて有田陶器市を眺めてみると…見えてきました見えてきました、陶器市のもうひとつのお愉しみが。


これがウワサのナニワイバラ。只今、『伝平窯』出展中。
これがウワサのナニワイバラ。只今、『伝平窯』出展中。

新緑のグラデーション

 

ああ、きれいだなあ。

 

そういえば、

 

あの花ナニワノイバラも

 

もう満開のはず。

 

ほら、

咲いてる

咲いてる!



病気もしないし、全然手はかかりませんよ」と、バラ棚と見まがうようなガレージの家の主、前尾広喜さん。おすそ分けの挿し木苗もすぐに完売で、有田のナニワイバラは、あちこちで増殖中のようです。

「鷹巣瑞光堂幸平店ギャラリー」の

ナニワイバラも、ほら真っ盛り!

有田焼陶芸家の個展開催中ということで、誘われるままに鷹巣瑞光堂幸平店の古い屋敷の門をくぐり、お座敷へ。そこで真っ先に目に飛び込んできたのが、中庭に咲き乱れる見事なナニワイバラ。腰をおろしてしばし見惚れていると、冷たいお茶のサービスが。失礼しました、作品も鑑賞しましょうね。

こちら、

シャクナゲが主役の

「利久窯」のお庭です。

粋ですね。天然のシャクナゲを生かして造園した有田黒牟田地区の窯元のお庭。毎年この花を楽しみに訪れる人も多いそうで、陶器市前は開花のタイミングがずれないかと窯主さんは気をもみ、陶器市後は来年もきれいに咲かせるために従業員総出で花がら摘み。これぞ、おもてなしの心です。

※写真は、花がら摘みがちょっと…と苦笑いの 「利久窯」江頭光治さん。妻の陶子さんと。

 

うわっ、すごい。

泉山弁財天神社の

山藤、発見!

有田の目抜き通り東端に国の天然記念物の大公孫樹(おおいちょう)があります。新緑もさぞかしと足を運んでみたところ思いがけず、弁財天神社の杜につるを張り巡らせたこの花に出会いました。大公孫樹とあわせて御観賞下さい。

※陶郷を包む新緑に心癒されます。

 風薫る5月。陶器市が開催される大型連休の頃は、植物が一斉に輝き始める、一年でも一番心華やぐ季節です。やきものの里有田は山々に囲まれた盆地で、歩いているだけで通りの奥からも路地の間からも、新緑のグラデーションが目に飛び込んできて、「ああ、今年も陶器市の季節になったんだなあ」としみじみ実感させてくれます。

 

 そんななか、陶器市の常連さんたちが毎年再会を楽しみにしている花があります。ほらほら、今年も咲いてる、咲いてる!と心躍らせる花があります。それがウワサの「ナニワイバラ(ナニワノイバラ)」です。真っ白な一重のつるバラで、一つ一つの花はとても清楚なのですが、その大輪の花が一斉に開花すると、まぶしいほどの輝きで、何ともいえない華やぎがあります。

 

 陶器市のメインストリートから、川沿いにちょっと脇へそれたあたりに出店する「伝平窯」は、そのバラ棚の下。ナニワイバラといえば「伝平窯」、「伝平窯」といえばナニワイバラというくらい常連さんの間では名物になっています。

 

 しかし、ん? よ~く観察すると意外や意外、なんとそこはバラ棚ではなく、一般住宅のガレージ! 家主の前尾広喜さんが奥さんと二人で鉢植えから育て始めた苗が、いつしかガレージの淵を覆うほどに成長していたのです。

 

 それにしてもバラは手がかかるといいますから、ここまでするにはさぞかし…。「いやいや、このつるバラは原種だからとても丈夫。栽培は難しくないですよ」と前尾さん。調べてみるとなるほど、耐寒性耐暑性に富み、病害虫の被害もほとんどなく生育も旺盛で、暖地では野生化しているものもあるそうです。ついでに何故「ナニワ」かといえば、江戸時代に中国から伝わり、大阪の植木屋さんが広めたことから「浪速(難波)」の名がついたのだろう、というのが「日本の植物分類学の父」といわれる牧野富太郎博士の説なのだとか。へぇ。

 

 大型連休中に満開を迎えるナニワイバラは、まさに知る人ぞ知る陶器市のシンボルフラワー。今度、出かけられる時にはぜひ探してみて下さい。「ああ知ってる知ってる、伝平窯のあの花ね」と言えるようになったあなたの陶器市満喫度は、間違いなくグンとアップしているはずです。