ぷちトラvol.16有田陶器市特集 2013年4月発行
※この特集は、2012年の有田陶器市の取材をもとに構成しました。
陶器市臨時店のスタッフは町おこしメンバーでもあります。 |
ちょっと前まで、有田陶器市は食事できるところが少なくて、お昼ごはんが悩みのタネでした。ところが、そんな買い物客の窮状を救うべく?ここ数年で食べ物系の出店が相次ぎ、陶器市会場はにわかに「食べ歩き」天国の様相を呈してきました。これが、けっこう楽しいのです。
まずは話題のご当地駅弁「有田焼カレー」。有田焼&焼カレーという、容器もメニューも駅弁としては意表を突くアイデアで、2008年のTV番組で都道府県駅弁ランキング1位となり、2011年にはJR九州第7回駅弁グランプリを獲得。JR有田駅には「有田焼カレー」専用の電子レンジまで備え付けられました。
この焼カレー、もともとは地元の「創ギャラリーおおた」の人気メニューで、店主の太田浩美さんがわが子のために作った愛情たっぷりの薬膳カレーがベースです。それを見た目もよく、冷めてもおいしい駅弁にするために、ルウの玉ねぎの濃度調整など工夫を重ねること5年。太田さんの精進と、地元町おこしグループの熱意と、当時の有田駅長さんの後押しで花開いた駅弁。そのままお土産に持ち帰る人もいて、2012年の陶器市初日には予想を大幅に上回る約4OOO個を売り上げました。
「有田焼カレー」のような華々しさはありませんが、というよりジミ~にたたみ半畳ほどのスペースに鍋ひとつ据えて、行列を作ってしまうというウワサの陶器市名物が、醤油煮込みの玉こんにゃくです。手づくりの段ボール製看板には「山形蔵王名物のこんにゃく」とあります。なんでまた佐賀有田の陶器市で山形?と思うわけですが、そこには有田ならではの深い理由があったのです。
こんにゃくを煮ているのは有田焼商人の奥様で、一年の大半をかけて全国を行商して回るご主人が、現地で食して「これはおいしい!」と気に入った山形の玉こんにゃくを、わざわざ取り寄せて陶器市で販売するようになったのだとか。しみじみとした味わいの煮込みこんにゃく、陶器市に行ったら必ず、という人も多いのかもしれません。
そしてもうひとつ、地元ならではのおやつ、その名も「アレつけ餅」です。お店の人によると、陶器市のお客さんから必ず「アレって何?」と聞かれるそうで、答えは「塩味の小豆」。小豆あん入りのよもぎ餅に、なぜか塩味の小豆あんがまぶしてあるのです。初心者は少々戸惑いますが、食べてみると意外とクセになりそうな味。
「有田では昔から1歳の餅踏みといえば、これなんですよ」。小豆を贅沢に使って、さすが、やきもので潤った有田です。