ぷちトラvol.16有田陶器市特集 2013年4月発行
※この特集は、2012年の有田陶器市の取材をもとに構成しました。
有田陶器市のメイン会場はJR有田駅から上有田駅までの線路と並行して走る有田内山地区の本通りで、歩行者天国となった道の両側に、やきものの店が軒をつらねます。最初は気持ちが高揚して、あの店も、この店も!と欲張ってしまうのですが、実際歩いてみるとこれが半端な距離ではありません。なにせ片道約3㎞。しかも会場全体の総店舗数は約550ですから。
だから、全店を制覇しようとなると一日ではとても追いつかないわけで、そこで力を抜いて「まあ、気楽に行こうじゃないか!」と気持ちを切り替えてみます。するとどうでしょう。陶器市の風景が一変。有田のレトロな町並みが目の中に飛び込んでくるのです。
1616年に日本初の磁器が焼かれて以後、陶業で栄えた有田では「有田千軒」と呼ばれるほどの立派な町並みが形成されます。しかし、これは1828年の文政の大火でそのほとんどが焼失。そこから再び形成されて現在に至る江戸末期から明治、大正、昭和初期にかけての町並みが、1991年に国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されます。その保存地区がまさに陶器市のメイン会場となっている有田内山地区の本通りなのです。
ほらほらみて下さい。陶器市会場を見上げれば、あちらもこちらもレトロ~。有田焼の歴史を彩る「今泉今右衛門窯」や「香蘭社」「深川製磁」「深川本家」など、漆喰塗の重厚な和風建築あり、モダンでお洒落な洋風建築あり。そのほかにも普段は空き家となっているレトロな建物も、陶器市が開催されるゴールデンウィーク中の期間限定でやきもの屋さんとして、息を吹き返します。
かつては陶磁器の貿易商だったという手塚商店の黒漆喰の建物は築100年。陶器市では店の奥の座敷をカフェとして開放。中庭を見ながらゆっくりコーヒーでもいただけば、歩き疲れた脚も軽くなるというもの。「蔵の2階にも上がってみて下さい」と言われるままに薄暗い階段を上ると、そこも隠れ家的な素敵な憩いのスペースでした。
こんなふうに、普段は外側からしか眺めることのできない建物も、実際に入って体感できるのも、陶器市ならではのお愉しみのひとつなのであります。