エタリの塩辛は、長崎県の橘湾沿岸の雲仙市小浜町、南串山町に今も伝わるカタクチイワシの塩辛です。その昔、橘湾はカタクチイワシ(地方名エタリ)の宝庫で、地元の人たちは秋の彼岸前後になるとエタリを塩漬けにして冬の保存食としていました。時代の流れとともに次第に作られなくなったものの、2005年にはイタリアのスローフード協会の「味の箱舟」計画(食の世界遺産)の認定食品となり、地元では漁業関係者を中心にエタリの塩辛愛好会が発足しました。
そのエタリの塩辛愛好会から、雲仙市の補助金を活用してエタリの塩辛をもうちょっと世の人たちに知ってもらう活動をしたい、というご相談を受けました。最初はポスターを考えられていたようでしたが、それだけでは効果はあまり期待できないと考え、素材を深く掘り下げて魅力ある情報として広く発信するために、佐賀の山内町の時と同じく、私共のフリーマガジン「ぷちトラ」を利用することをご提案させていただきました。効果は素材次第ですが、このエタリの塩辛は、まさにスローフード。その点は申し分ありませんでした。
取材を進めるなかで、年配の塩辛ファンはエタリというだけで目を細められますが、やはり若い世代は食べたことがない、苦手だという人たちが多く、ここを少し何とかできないものかと考えました。カタクチイワシを塩漬けにしたエタリの塩辛は、いわば和製アンチョビです。そこで若い人たち向けにアンチョビ代わりに塩辛を使ったスパゲティやピザトースト、グラタンなどのメニューを誌面で紹介することに。さらに、塩辛のままではちょっと手がでないという人たちのために、新商品としてエタリの塩辛とオリーブオイルとニンニクを原料にイタリアンな調味料も作ってしまいました。それが「パスタでも食べたいエタリの塩辛ソース」です。これはそのまフライパンに入れて火を通し、あとはスパゲティとあえたり、ご飯を炒めたり。本当に手軽で、地元の若者も「これはうまか!」と。
エタリの塩辛の特集記事を掲載した「ぷちトラ」6号は2008年4月に発行しましたが、その後は予想通り福岡や東京のマスコミから取材が相次ぎました。「パスタでも食べたいエタリの塩辛ソース」は、作って販売して宣伝までしていただける小浜温泉旅館の女将の会の協力があって、無事に日の目を見ることができました。ここまできて、何はともあれ、エタリの塩辛の認知度を高めるという最初の目的は達成できました。それと何より、ここまでの活動の中で、エタリの塩辛が地元の漁業関係者と旅館、観光業界の関係者とのネットワークの架け橋になれたことが大きな収穫。少しは町の活性化のお役に立てたのではないでしょうか?
※詳しくは、エタリの塩辛愛好会へ
http://shiokara.tenyo-maru.com/
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