佐賀市大和町の川上峡名物といえば、白玉饅頭。うるち米の生地で小豆あんをを包んだしっとり素朴なお菓子です。現在3軒ある白玉饅頭屋さんのうち、元祖の吉野屋さんは明治15年の創業で、今も6代目が昔ながらの製法と味を守り続けています。その吉野屋さんより地元商工会を通して、店舗改装の見直しで私共にご相談があり、ロゴやパッケージ、看板などのデザインをお手伝いさせていただきました。
お店のリニューアルから数年後、今度は「急速冷凍機が入りました」というご連絡をいただきました。白玉饅頭は、昔ながらの変わらぬ味ゆえ、賞味期限はつくったその日限り。隣県の福岡にもファンは大勢いるのだけれど、なかなか口に入るチャンスがなくて、以前からお取り寄せの要望がお客さんから寄せられていたそうなのです。そこで、急速冷凍した白玉饅頭の販売方法をどうするか、早速検討することになりました。
もしも自分が白玉饅頭をお取り寄せするとしたら、その数は少なくとも10個、いや20個、30個かな…。その場合、箱ごと冷凍庫に入れるのはちょっと厳しい。うちもそうだが、どこのお宅でもだいたい冷凍庫は満杯状態だから。一度に一箱食べてしまえばいいが、ストックしておいて数個ずつ食べるとなると、こちらもやっぱり箱入りは不便だ。となると、残された冷凍庫のスペースのほんの隙間にも押し込められるようなコンパクトさと、食べる分だけ解凍できる手軽さがベストであろう、と。そこで、白玉饅頭3個入りの個包装を提案させていただくことになったのです。
そして、さらに考えました。白玉饅頭は確かにおいしいが、少し味に変化を持たせた商品もあると、また食べる楽しみがプラスされるのではないか、と。でも、伝統の味なので、あまり手を加えすぎるのはよくない。う~ん、どうするか。そう、白玉饅頭にちょっとだけ焦がしを入れて、ほんのり香ばしさをプラスするというのはどうだろう。定番のしっとり白玉饅頭とはひと味違った味わいだが、本来の魅力を生かしての変化だ。6代目の奥さまも、「そういえば昔、祖母が少し固くなった白玉饅頭を火鉢であぶって食べさせてくれた」と。つまり、これもまた懐かしの味だったのです。
焦がしの“ほんのりとした香ばしさ”には吉野屋さんの試行錯誤があったのですが、最終的には満足の味わいに。こうして出来上がった白玉饅頭お取り寄せ版。それまでは店頭販売だけでしたが、今では通販はもちろん、東京や大阪などでの物産展にも参加できるようになり、また卸しも始めるなど、営業スタイルがずいぶんと変わってきたようです。それでもやっぱり昔も今も変わらぬ白玉饅頭。こんなに素朴なお菓子一筋で百数十年ということ自体、すごいことだとつくづく思います。それだけ日本人の嗜好にピッタリはまった味なんですね。
※詳しくは、吉野屋さんのホームページへ ▶▶▶http://www.yoshinoya-net.com/
佐賀、川上峡名物
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