商工会の補助事業に「地域資源全国展開プロジェクト」というものがあります。これは地域資源を全国規模の市場へ打ち出すための補助事業で、佐賀県の旧杵島郡山内町(現在は武雄市)の山内町商工会に平成18年度の補助金がおりることになり、私共がそのお仕事をお手伝いさせていただくことになりました。そこで、この補助事業の目的について、こう考えました。「地域資源を全国へ」ということは反対に、全国から人を呼び込み、そこで地域資源の魅力を知ってもらうことでもある、と。であれば、観光客を呼び込み、観光消費額のアップをはかるために、まずは山内町の観光資源の磨き上げが必要である、と。
そこで早速、商工会の担当者のお話も聞きながら、山内町の現地調査を始めました。山内町はどんなところなのか、どんなものがあって、どんな人たちが住んでいるのか。当時はまだ武雄市との合併前の杵島郡山内町の頃で、隣の有田町は有田焼で全国的に有名でしたが、山内町は佐賀県内でも知名度はあまり高くはない地味な存在でした。ところが、実際に町内を巡ってみると、これがどっこいすばらしい観光資源が眠っているではありませんか。まさに地域資源の宝庫だったのです。
まず何がすばらしいといって、山に囲まれて田畑が開けて、目に飛び込んでくるのは緑、緑、緑。“立派”がつくほど田舎らしい田舎だったのです。そして、有田のように大きな窯元はないのですが、小さな個性的な窯元が町内に60余軒も点在して、喫茶や食事のできる窯元もある。やきもの好きにはたまりません。さらに、町を東西に貫く国道35号沿いには、人気の道の駅があり、その隣には地元の素材をふんだんに使ったバイキング形式のお洒落なレストランもある。そして、とどめは町のシンボル黒髪山。峻険な岩がそそり立つ勇姿もさることながら、この山は植物学者は必ず一度は登るといわれるほど、植物の種類の多さでは全国的に有名な山だったのです。実際に標高516mの黒髪山に案内してもらい、頂上からの眺めに歓喜の声をあげました。
山内町の特産品としては黒米がありました。これは自然を守ることから始まった栽培でしたが、町のシンボル黒髪山の「黒」にかけて、黒米に続いて黒大根、黒トマト、黒スイカなどの黒シリーズも登場。道の駅の隣のバイキングレストランでも素材として使われていました。
このすばらしい山内町の魅力をより多くの人たちに発信するために、効果的な方法を考えました。それは私共が制作しているフリーマガジン「ぷちトラ」(年2回各5万部発行)に山内町の特集を組むことでした。「ぷちトラ」は有田陶器市、唐津くんちの現場での手配りが基本で、あとは近隣の観光地や駅、福岡市内とその近郊のお店などに設置させていただいているほか、東京のマスコミ各社にも届けられるので、発行部数は5万部ですが実質は全国規模で情報が発信される仕組みとなっているのです。ただし、それも素材次第。素材自体に魅力がなければ、効果は期待できません。
そして平成18年10月発行の「ぷちトラ」4号に山内町特集を掲載。併せて特産品の黒米を使ったパスタも開発し、福岡のデパートで山内町の特産品の展示会を開催。それを地元マスコミにもアピールすることで九州圏内の視聴者にも情報を発信。東京の観光関連の全国誌に山内町の観光地としての魅力や黒米商品などのプレゼンテーションも行いました。そしてフタをあけてみれば…山内町商工会には福岡や東京のマスコミから取材の申し入れが相次ぎ、3年経った現在でも取材は続いているそうです。九州各地から全国から、観光客も確実に増え、「ぷちトラ」片手に山内観光する人の姿もよく見られるとうかがいました。九州内では「黒米といえば山内町」という認識が高くなり、全国のデパートや専門店などから黒米商品についての商談があったそうです。
山内町の仕事は約1年間にわたりました。地元の人たちにも一人ひとりお話をうかがうなど取材にもかなり時間を割きましたが、だからこそ山内町の真の魅力に触れられたのだと思います。さらに商工会の皆様の1年間の健闘もまた、このプロジェクトの成果に大きくつながっています。そして最後に、山内町民版「ふむふむなるほど黒髪山入門」というパンフレットを制作しました。自分たちの住む町の魅力を再認識していただくためです。素敵な故郷をどうぞいつまでも大切に、という気持ちを込めさせていただきました。
※詳しくは、山内町商工会のホームページへ ▶▶▶http://www.sashoren.ne.jp/yamauchi/
黒髪山からの眺め
フリーマガジン“ぷちトラ14号”
山内町特集
山内町の観光と物産をPRする展示会
福岡市天神の大丸デパートで開催。